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今回は、第1製造部品質管理課のWさん(写真中央)、Uさん(写真左)、Fさん(写真右)にお話を伺いました。
 

化成品工場として1965年から操業している吉野原工場は、全国に5つある東京インキの工場の中で最も歴史のある生産拠点です。ここで主力製品のマスターバッチ(*1)を製造しているのが第1 製造部。その品質検査が品質管理課の主な業務です。Wさん曰く「安定した品質を維持し、不適合品を出さないようにすることが最大のテーマ」。管理図に基づいて検査項目を確実にこなしていくのだそうです。「実際に見てもらったほうが早いでしょう」と案内していただいて、まず目に飛び込んできたのは膨大な数の製品見本が保管されているキャビネット。さらに検査ごとに区分けされた建屋内部を進んでいくと検査機器が次から次に現れ、課員の方がその前で黙々と作業を進めています。

Wさん

同じような光景は当社の各工場で見られると思いますよ。品質管理課は製造部門ごとに設置されていて、こことは別の建屋になりますが吉野原工場には第2製造部の品質管理課もあります。

さまざまな機器に囲まれた職場ですね。

Wさん

検査機器だけではなく、インジェクション成型(*2)やインフレーション成型(*3)の機械もありますからね。検査には配合設計通りに作成したシートやプレートを用います。当社の強みのひとつが「小ロット多品種」ということもあって、そうしたプレートだけでも1日に100枚ぐらい作成します。例えば樹脂:マスターバッチ=100:3で使われる製品ならその比率で練って、それをプレスして作ったプレートで検査をするんです。
 

品質管理課で行っている検査をざっくりまとめると以下のようになります。
検査項目が少ない製品もありますが、受託製品はオーダーメイドなので検査内容もそれぞれ異なってきます。

非常に稀だとは思うのですが、クレームにつながるような不適合というのはこうした検査をすり抜けてしまったということなのでしょうか?

Wさん

全量検査をしているわけではないので、1トンとか2トンからランダムに採った100グラムの試料で合格を出したけれど実は問題があった。そういうことはあり得ます。だとしても品質管理課で合格を出したものに他部署からブレーキがかかることはありませんから、そこは一番プレッシャーというか責任を感じるところです。

近年は不適合やクレームは減ってきていると伺っています。従来とは違う取り組みを何かされているのでしょうか?

Wさん

クレームや品質不適合への対応も私たちの仕事ではありますが、そういう業務にリソースが割かれるのはもちろん本意ではありません。そこで私が品質管理課に異動してきた3年ほど前から社内に働きかけ、製造現場向けの講習会を実施しています。それが成果となって表れてきたのではと感じています。

Fさん

製造現場の課長に「こういうテーマで講習をやりたいので声をかけてもらえますか」と打診して、各班で参加してもらうという形です。

製造現場向けの講習会ですか…?実際それが不適合やクレームの削減にどのようにつながっていくのでしょう?

Wさん

製造現場の人たちって自分が作っているマスターバッチがどういう製品に使われているか意外と知らないんです。でも例えば「このグレーのペレットはこの化粧品のチューブに使われている」というのが分かると彼らの意識が変わります。こんな用途に使用されていると頭の中でイメージすることで、より品質の高いものを生産しなければいけないという意識の向上に繋がってい くんじゃないかなと。そういう一人ひとりの「意識付け」が大事なんじゃないかと思っています。

Uさん

添加剤の生産現場では、品質管理課が主体となって、週に製造する品目に対して過去10ロット分の検査データと比較して何かおかしなところがないかを前の週までに確認する取り組みを行なっています。技術部にも参加してもらって定例的に情報共有できていることで問題に気づいたときも素早くコミュニケーションが取れる気がします。

Wさん

そうですね、だいぶ風通しがよくなりました。これまでは、コミュニケーションが取れている職場もありましたが、現場は現場、技術は技術、それぞれ自分たちで解決しなきゃみたいな空気があった。ちょっとぐらいやりにくくてもなんとか頑張ってやってしまおうみたいな。今は「この製品すごく作りにくいんだけどな。」、「だったら技術部に相談してみたら?」というようなやりとりが自然とできます。

ガバナンスと言ったらおおげさかもしれませんが、コミュニケーションや情報共有のあり方を見直したことで、各部署のリソースをより生かせるようになったわけですね。

Fさん

私は製造現場にいたのですが、「こんなこと気づいた」みたいなやりとりを近い世代同士でしていてもそこで情報が止まってしまって社内でうまく共有できていないと感じていました。若いスタッフの中にもいろんな意見を持っている人がいるのに、その持って行き場がないというか…。でも最近はそういう発信がしやすくなったと思います。そのような意見を基に月例ミーティングを実施していて、現場・技術・品管で1ヶ月分の問題をまとめて共有するようにしています。

Wさん

聞いてみると似たような状況は製造現場にもあったんです。過去のクレーム案件に基づいて取られた対策がそれ自体は実施されているんですけど、時間が経って「なぜ」の部分がすっぽり抜けてしまい、誰も理由を知らないんだけどとりあえずやっているとか。でも技術部や品質管理課では「この銘柄ではこういう問題が過去にあった」という背景を知っていたり、データとしてもすべて残っているんです。だから今、それを共有できるようにもう一度データを整理しているところです。「ここを確認していなかったから過去に問題が発生した」だからチェックしているという「意味」を理解してもらいたいと思っています。

そうした裏打ちがあっての品質の安定化、ひいてはメーカーとして信頼が築かれていくのですね。最後に、Wさんたちの活動の原動力は何なのでしょうか?

Wさん

実際にものを作っているのは自分たちではなく製造現場です。そこでちゃんとしたものをしっかり作ってもらいたい。そのために私たち品質管理課が製造現場と技術部をつなぐ架け橋になれたらいいな、という思いでしょうか。技術部にいたころからずっと思っていたのですが、やっと動き出すことができて、今その手応えを感じています。

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