今回は、第2製造部品質管理課のSさん(写真右)、Tさん(写真左)、Oさん(写真中央)にお話を伺いました。
朝、出勤して最初にやることは検査機器の起動。日常点検を済ませ、自分が担当する製品の検査をスタート。検査業務を進めていくと、製造現場を確認する必要が出てくることもしばしば。そんなときはすぐに製造現場に移動。製品を確認しながら現場スタッフとやりとりした結果、今度は技術部へ…。これも品質管理課の大切な業務。「事務所には自分のデスクや検査室がありますが、そこだけが品質管理課のフィールドではありません」と折原さん。「品質管理≠検査」この言葉に込められた真意とは?
第2製造部では、以下のような3つの事業領域の品質管理を行っています。それぞれの製品は、最終的な使用方法に合わせて設計されているため、使用している原材料、生産機、要求スペック等が異なるものになります。
● グラビアインキ(GR) ● 強化プラスチック用着色剤(FRP-C) ● インクジェットインク(IJI)
最終製品の用途によって、さまざまな製品があるわけですね。品質管理課の役割という点ではどうでしょう か?
製品が違ってもそこは共通しています。扱う検査機器に違いはありますが、製造・技術・品質管理、この3つの部署の連携の中での立ち位置であったり役割や目的は同じです。
「不適合品を出さない」という?
そうです。やはり「品質をつくり込んでいく」というところです。検査でここがOK、ここがNGと線を引くよりもっと前の段階。工程のところからものづくりをしていかないと良品はなかなかできません。そのために「ここをもっとこうしたほうがいいんじゃないか」というところを製造現場や技術部と一緒になってやっています。
そのような部署連携によってPDCAが回り、結果として良品条件が確立されていく?
そうですね。「検査で(製造が)止まる」となるとその時点で損失が出てしまいますが、工程のところで良品を作り込めればそうした損失が抑えられます。そのためにはちょっとした変化でも「こんなことがあった」「ここがやりづらい」とその場で言ってもらえると助かります。意見を吸い上げることで改善につながっていきます。
私はインクジェットインク(IJI)を担当しているのですが、自分が日々検査しているものがどんなふうに製造されているか自分の目で現場を見たいですし、サンプルも自分から取りに行くようにしています。「現場から持ってきてもらえばいい」というのではなくて。製造・技術・品質管理が集まる月例ミーティングもありますが、製造現場や技術部と常日頃からリアルタイムの情報共有ができていると、全体で集まったときの意見交換がより有意義なものになると感じています。
製造現場で何が起きているか状況を把握することも品質管理の一環なのですね。
日々起こっていることをなるべくリアルタイムでつかむこと。それによって不適合やクレームの削減につなげていけると思っています。
何気ない会話が部署連携の潤滑油になっているようですが、それぞれ立ち位置の違う部署の意見がくい違う ようなことはないのでしょうか?
現場は製造を止めたくない、品質管理はもっと厳格にやってほしい。確かにそういうことはありますが、「なぜNGなのか?」「どういう取り組み・対策が必要か?」をみんなで一緒に考え て、品質管理課の独りよがりにならない着地点を探るようにしています。言われたからやるというのではなく、そういうコミュニケーションを通して品質管理という概念が現場に浸透してきています。
前編でも、製造現場向けの講習会が「意識付け」につながり、それが不適合削減につながっているというお話がありました。
「もしこれを間違えたらどういうことが起きるのか」を考えながら仕事をしてもらう。そのための視点を身につけてもらう。そういう啓蒙によって不適合やクレームを減らしていけるなら、これも品質管理の仕事ではないのかなと思っています。
品質管理というと「検査」をまず思い浮かべてしまうのですが、製造工程の最適化であったり、製造現場との意思統一であったりと、また違った側面からの取り組みがあるのですね。先ほどSさんが仰っていた「品質をつくり込んでいく」という言葉の意味もより深く理解できた気がします。
「一般的には「品質管理=検査」なのかもしれませんが、モノづくりの現場に一歩踏み出て、周辺の情報に触れて、そこからコミュニケーションを広げていって製品を作りこんでいったほうが僕はおもしろいと思うんですよ。検査で完璧を目指すことも重要ですが、仕事の幅が広がったらもっと楽しいじゃないですか。
製造工程であれ、検査体制であれ、ひとつの部署だけで「変えたほうがいい」「変えてはいけない」の判断を下すことはできません。大事なのは結局コミュニケーションなんです。何かを変えるとなったら、製造・技術・品質管理が一緒になって取り組まなければ前に進みませんから。
そうした成果はどのように現れているのでしょう?
クレーム・不適合の件数は年々減ってきています。品質管理は、顧客満足を最優先に考えています。製品の品質を向上させることで、お客様の期待に応え、信頼を築くことを目指しています。
Tさん「 製造現場で直接コンタクトをとるのは、日々起こっていることをリアルタイムでつかむため」
Sさん「 ひとつ改善できたら水平展開することで同じようなトラブルを未然に防ぐことができます」
Oさん(中央)「問題が起きてからではなく、起きる前に製造工程や検査方法を改善できた事例もあります」
検査用に作成した強化プラスチック(FRP)の成型プレート