今回は、生産・技術部門インキ技術第1部 斎藤さん、伊藤さん、営業部門インキ営業第1部 大塚さん、佐野さんにお話を伺いました。
近年、食用ホタテ貝の産地が貝殻の廃棄問題に頭を悩ましていることをご存知でしょうか。UV抗菌・抗ウイルスニス SCPシリーズは、そんな厄介者扱いされているホタテ貝殻に含まれる強アルカリ成分に着目し、WM株式会社のご協力のもと東京インキ株式会社・株式会社気生堂印刷所が共同開発した特許技術によって誕生したUVニスです。
この抗菌・抗ウイルス技術は、塗布された印刷面が水分に反応した時だけ一時的に強アルカリ性(pH11以上)になることから、通常水分を含んだ状態で浮遊する細菌やウイルスに対して有意に作用するというもの。従来からある銀イオン系ニスに比べ安価に抗ウイルス加工を提供でき、しかも印刷物を廃棄した後も環境に影響を及ぼすことのない自然にやさしい製品です。
斎藤
「きっかけは『放置されてゴミになっている大量の貝殻で食用ホタテ産地が困っている』。そんな話からでした。ホタテ貝殻をリサイクルした抗菌剤はこれまでも抗菌プラスチックに利用されていたので、それを印刷分野で応用できないものだろうかと。当然最初は抗菌インキを考えましたが、それだと抗菌性があるのはインキが乗っている部分だけ。であればニス。薄く塗布するニスなら採算面も見合うだろうということで開発が始まりました」
大塚
「そんなやりとりがあったのが2019年9月。用途としては当初からマスクケースを想定していました。インフルエンザの流行は毎年のことなので一定の季節需要があるだろうと。まさか半年後にコロナ禍がやってくるとは思いもよりませんでした。結果的にウィズコロナ時代の抗菌ニーズを捉えるタイミングでの製品化が実現したのですが、そもそものテーマはホタテ貝殻のリサイクルなんです」